令和3年度機械クラブ 「若手研究者は今」
講演会(報告)
 開催年月日 : 令和3年12月4日(土) 11:30-12:40       
開催場所 : Zoomによるオンライン講演会 

寺本 武司 助教を講師に迎えて、恒例の「若手研究者は今」講演会が開催されました. 今年度はコロナ禍の開催ということもあり,Zoomによるオンライン講演会を開催しました.

                 
◆講演:高性能アクチュエータ実現を目指した形状記憶合金の材料設計
            (講師:神戸大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 寺本 武司 助教)
講演内容
 はじめに,研究のご略歴をお話いただき,金属材料内部の微細構造と材料の性質の関係について研究をされているとのご紹介があり,特に形状記憶合金を中心に研究をされているとのご紹介があった.
 次に,形状記憶合金の特徴について,詳しくお話いただいた.形状記憶合金は大きな変形を加えても加熱により形状を回復できる特徴がある.形状記憶合金が社会で適用されている例として,眼鏡フレームだけでなく,血管拡張用ステントや,温度センサーとして熱湯防止弁や油量調整ユニットなどに適用されていることをご説明いただいた.形状記憶合金の特徴を活用して,熱と変位(運動)の変換に関して研究に取り組んでいることがご紹介された.熱から運動を取り出したり,逆に振動から熱を取り出したりするようなアクチュエータに活用でき,主にTiNi形状記憶合金が使われている.TiNi形状記憶合金を用いる利点としては,動作力と変位が高い点であること,固体アクチュエータとして使用できることであり,小型で高出力,高信頼性のアクチュエータとしての適用が可能となる.欠点としては,繰り返し動作による機能劣化があげられ,解決策として,繰り返し動作により機能劣化しない形状記憶合金を開発することが求められている.
 次に,形状記憶合金の機能劣化の発生原理について,ご説明いただいた.形状記憶合金の機能劣化は金属の内部構造に欠陥が蓄積することによるものであり,その中でも材料内部のマルテンサイト相に着目した解析とプレート間のせん断方向のひずみが重要であることをご説明いただいた.プレート同士の結合状態を考慮することで,欠陥の発生を抑えることに着目し,結合面の不適同度を小さくすることを試みている.組織形成過程を計算機シミュレーションすることにより推定することが可能となり,不適合度が小さくなるように界面を制御することで形状記憶合金の機能劣化を低減できることが示唆できたことをご紹介いただいた.
 最後に,設計指針を適用可能な合金系の開発についてご紹介いただいた.形状記憶合金と高エントロピー合金を混ぜ合わせることで,高機能な合金を作ることを試みていることをご説明いただいた.まだ,課題はあるとのことだが,作成方法のノウハウの蓄積はできたため,今後配分率などを調整することで実用性の高い形状記憶合金の開発に大いに期待できる内容であった.
(文責:M56西田)