令和1年度機械クラブ 六甲祭協賛講演会(報告)
 開催年月日 : 令和1年11月9日(土)10:00-11:50       
開催場所 : 神戸大学 六甲台第1キャンパス 第一学舎(本館)I232 

恒例の六甲祭協賛講演会が開催されました.講演会は六甲台本館第1学舎で行われました.例年通り,今井陽介教授の講演会に加えて,学生の自主活動であるレスキューロボットおよび学生フォーミュラの活動報告がありました.

                 
◆講演会…「機械工学先進研究」紹介 (司会:白瀬 敬一 教授)
○講演題目:体の中の流れの計算バイオメカニクス
○講  師: 今井 陽介 教授
講演内容
 今井陽介教授が現在取り組まれている生体内で起きている現象のシミュレーションに関する最新の研究について,ご講演をいただいた.
 まず,生命とは何かについて,ご説明いただいた.ヒトの60%以上は水であり,体の中のほとんどは何かが流れている.その生体の流れを実験的に観察することが困難であるため,コンピュータを用いて表現することが必要であることをご説明いただいた.本講演では,大きく2つのトピックを取り上げられた.
 1つめのトピックは,微小血管の血液の流れを計算することである.血液の45%が赤血球であるため,微小血管では赤血球挙動を無視できない.毛細血管は赤血球の大きさくらいの細さであり解析が困難である.赤血球を超弾性膜に覆われたニュートン流体としてモデル化することで解析を可能にしたことが説明された.
 ここで,膜の固体力学と細胞質の流体力学を真面目に解いていくことが重要であるとご説明された.また,動画を用いて微小血管内の流れのシミュレーション結果をご紹介いただいた.
 2つめのトピックは,胃の中の流れを計算することである.まず,胃の構造と機能をご説明いただいた.次に,胃壁の運動や流動の可視化手法としてX線撮影や超音波計測,MRIなどが紹介された.数値流体力学を使って,医用画像データから実形状のモデルを構築し,胃の内容物のモデル化を併せて行い,質量保存則,運動量保存則を用いて,力学の方程式を真面目に解くことでシミュレーションが可能となったことが紹介された.また,動画を用いて胃の中の流れのシミュレーション結果をご紹介いただいた.
 ご講演の後の質疑応答では聴講された方々からシミュレーション条件に関する質問やシミュレーションの適用範囲などに関する質問があった.(M56 西田)

◆「学生の自主活動」報告 (司会:白瀬 敬一 教授)
◇ロボット研究会チーム(報告者:鈴木 健司)
 神戸大学ロボット研究会「六甲おろし」は2019年8月10, 11日に神戸サンボーホールにて開催された第19回レスキューロボットコンテストに出場しました.
 制御システム作成の遅れにより思うように機体を動かすことができず, 予選敗退となってしまった前回大会の反省を踏まえ, 前回達成できなかった「確実な救助」を再度コンセプトに掲げて早期から大会への準備を進めて参りました. 前回大会の終了直後から制御システムの再構築を行い, それと同時に, 機体に関しては前回の製作物を再利用するなどして作業量を削減し, 調整に時間をかけられるようにしました.
 1号機は広い可動域を持つ2本の把持型アームを特徴としており, これによって瓦礫を撤去するほか, 内蔵のベルトコンベアで負傷者の救助を行います. 同機は前回大会の製作物の再利用ですが, タイヤをメカナムホイールに替え, 機動性を向上させました. 2号機は上下方向に大きく動くアームと高さを調節できるベルトコンベアを備えた万能機です. 1号機に比べ小型で, 機動性を向上させています. 3号機は情報収集を目的とした機体です. 4足歩行による移動を特徴としており, 不整地を進んで映像や音声で現場の情報を伝えます.
 制御システムについては, 処理速度の向上を目指して既存のシステムを大きく変更し, また機体ごとの調整を簡便にするために他言語の埋め込みを行いました. これにより, 劇的とは言えないまでも, 映像の遅延を減らし, 利便性の向上に成功しました.
 3号機の取り組みが評価され, チャレンジ枠として本戦への出場を果たしましたが, 本選では思うような操縦ができず, 不本意な結果に終わってしまいました. この原因は, 新機体の作成の遅れによる整備不良と, 操縦者の練習不足にあると考えています. 第20回大会に向けては, 今回よりもさらに前倒しで計画を進めることでこれらの課題を解決していきます.
 最後に, 日頃より私たち六甲おろしの活動にご理解, ご支援いただいておりますKTC機械クラブの皆様に厚く感謝を申し上げます. 今後もより安定した救助を目指して精進を続けて参りますので, これからも温かいご声援をお願い致します.

◇学生フォーミュラチーム(報告者:辻 健太)
 神戸大学学生フォーミュラチームFORTEKは2019年8月下旬に開催されました学生フォーミュラ日本大会2019に参戦しましたので、その結果をご報告いたします。
 学生フォーミュラは1981年に"Formula SAE?"としてアメリカで初開催されました。日本でも、"ものづくり、デザインコンペティション"というスローガンを掲げ、毎年9月初頭に2003年から自動車技術会主催のもと全日本学生フォーミュラ大会が開催されております。世界では500大学以上の参戦が有り、今年度の日本大会では98校がエントリー致しました。
 今年度のプロジェクトは大きなパッケージング変更が行われた昨年度マシンをベースに改良し、ドライバーの育成やサスペンションセッティングの成熟を行うことでマシンのポテンシャルを大会で最大限発揮することを戦略に始動しました。ベースを引き継いだことにより設計・製作期間を短縮することができ、実車走行に多くの時間を割くことができました。
 大会の様子をご報告いたします。
 昨年度高順位で大会を終えることができたため、大会1日目から車検を優先的に受けることができるシード校として大会に臨むことができました。本番の車検では1発通過とはいきませんでしたが、事前に入念な対策を行っていたことで軽微な指摘に留まり、2回目の車検ですぐに通過することができました。
 マシンの設計プロセスについて審査する(デザイン審査)、マシンの製作コストを正確に計上する競技(コスト審査)、マシンの販売戦略をプレゼンテーションする競技(プレゼンテーション審査)の3つで構成される静的競技では、各担当者が入念な準備のもと挑みました。結果は、昨年度から順位を上げた部門、下がってしまった部門とそれぞれですが、強豪校に肉迫するためには全体的なレベルアップの必要性があると痛感させられました。
 実際の走行性能を競う動的種目の中でも、最も大きな配点を持つ耐久走行(エンデュランス)では、オートクロスのタイム上位の枠で走行いたしました。昨年度は豪雨に見舞われ本来の走行性能を引き出すことができませんでしたが、今年度は快晴で競技に臨むことができました。逆に言えば、ドライバーがマシンの限界性能を引き出して走行できたため、厳しい暑さも相まってマシンに大きな負荷がかかるコンディションです。そのため多くのチームがリタイアを喫する波乱の展開となりました。私達のマシンも一時トラブルによりスローダウンをしてしまいましたが、何とか完走することができました。リタイアを喫した大学の中には強豪校も多く含まれ、この種目で大きく順位を上げることができました。
 最終的に今年度の総合成績は総合5位という結果を獲得でき、チームの長年の悲願でありました表彰台に上ることができました。
 2019年度は長年のチームの目標を達成した躍進の年となりました。一方で、全体的な競争力不足を痛感した場面も多くありました。今年度は、波乱のエンデュランスをくぐり抜け高順位を獲得できましたが、この地位を盤石なものとするためにはさらなる成長が必要だと強く感じます。今年度の結果に決して甘んじることなく、さらなる高みを目指して2020年度プロジェクトはすでに始動しております。
 今年度活動できましたのも機械クラブの皆様方の多大なるご支援を頂いたおかげでございます。この場をお借りしましてお礼申し上げます。今後とも、私たち神戸大学学生フォーミュラチームFORTEKをどうぞよろしくお願いいたします。